往復書簡 1
本企画の演出を担当する田中秀彦と企画プロデューサーの百瀬友秀による往復書簡です。


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田中秀彦
コスチュームアーティスト、演出家
百瀬友秀
演出家

 

田中様

 今回の演出プラン、というか現段階のプロットを拝見し、これは上演に向けてのプロットというより、田中さんが今回のテキストに向う際に、調理する前の材料化、というか、こういうアプローチをしていく、という読解の際の整理化という印象を受けたんですね。日本の舞台手法への眼差しからこの材料を使い、空間化、作品化しようということだと思うのですが、実際、この「日本的」というものが実は非常に厄介な部分だと思うんです。歌舞伎や能までを含めた、この国にある「演劇」をみると、そのスタイルは実に様々なものだと思います。ただ、その手法を取り入れる際に、不用意にやると「こんなスタイルがありますよ」という紹介にとどまってしまう危険性が高い。つまり、その手法を取り入れる必然性が無いところでは、逆にそのスタイルを活かしきれないということになってしまうと思うんです。ただ、今回の田中さんのプランで面白いところは「日本の舞台の手法を引用する」と、しているところだと思うんです。つまり「引用」という言葉の使い方に、「日本的なもの」と田中さんとの独特な距離の取り方の手つきがあるように思います。恐らくそれは田中さんと安吾の距離感とも密接に関わってくる問題なのではないかという気がする。ここに「和的なもの」を活かす新たな方法が見出せるのではないかと。そのあたりから話を始めていければと思います。
2009年5月4日 百瀬友秀