往復書簡 7
本企画の演出を担当する田中秀彦と企画プロデューサーの百瀬友秀による往復書簡です。

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田中秀彦
コスチュームアーティスト、演出家
百瀬友秀
演出家

 

田中様

  「テーマパークからの観客の奪還」というユニークな指針に大変感銘を受けました。演劇は元来「みる人」と「みられる人」が存在すれば成立する、と言われており、その関係性への探求に、演劇が演劇たる所以があるのだと思います。田中さんのおっしゃる通り、現代では劇場に足を運ぶことより刺激的で、魅力的なことが沢山あることは認めざるを得ません。ただ、刺激的な映画や音楽等で溢れかえる現代は、むしろ、その中で演劇独自の魅力を再確認することができる(もしくはせざるを得ない)良い時代なのではないかと考えています。

ここで「演劇の独自性」について田中さんの考えを おきかせ願えればと思います。 というのは、私自身の昨今の経験から、 演劇を作る側の多くが、テーマパークを目指している様に感じられるからです。もしくは映画やTVの真似をしているような芝居が多い。その土俵で勝負をしても、それはあらゆる意味で薄まった効果しか得られないですね。「演劇でしかできないこと」ということを真剣に考える必要があるのだと思います。そこへの意識のなさが「劇場離れ」に少なからず関係しているのではないでしょうか。
2009年6月26日 百瀬友秀