往復書簡 8
本企画の演出を担当する田中秀彦と企画プロデューサーの百瀬友秀による往復書簡です。


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田中秀彦
コスチュームアーティスト、演出家
百瀬友秀
演出家

 

百瀬様

夏が始まりましたね。演劇を創作している側の、舞台機構の分析の希薄さ。正に最大の問題点だと思います。

「演劇の独自性」ですか。長い歴史の中で繰り返し議論され続けてきた事ですが、舞台芸術の揺るぎない証拠は、時間と空間と身体を共有するという点だと思います。昨今の映像やミクストメディアの作品の共通モチーフとなっているものも 突き詰めると結局は、これらの三次元空間における人間の絶対的共通項に行き着く宿命を孕んでいます。根本的な行為、表現としての意義、劇場の機構、そういったものを総括した思考を共有できる作品の構築を目指したいものです。「演劇でしかできないこと」は「演劇でもって演劇を考察すること」ではないでしょうか。
プールの陽射しの水無月吉日 田中秀彦